都鳥(隅田川)

富士の山へ

さらにどんどん行って、武蔵の国と下総の国との間に

とても大きな川がある。それを隅田川という。

その川のそばに集まって座って

思いをはせると、限りなく遠くにまでも来てしまったことよ

と嘆きあっていると

船頭が「早く舟に乗れ、日も暮れてしまう」と言うので、

乗って渡ろうとすると、人々は皆わびしくて、

都に想う人がいないわけではない。

ちょうどその時、白い鳥で、嘴(くちばし)と足とが赤い、鴫(しぎ)の大きさであるのが

水の上に遊びながら魚を食べる。

都には見えない鳥なので、人々は皆、知らなかった。

船頭に尋ねると、「これはなぁ都鳥」というのを聞いて、

名にし負はばいざ言問はむ都鳥 わが思う人はありやなしやと

〔(都ということばを)名に負っているのならば、さあ尋ねよう、都鳥よ。

私の想う人は生きているのかいないのかと〕

と詠んだので、舟の中の人は揃って泣いてしまった。

関東には、隅田川沿いに

伊勢物語の都鳥の名所が何箇所かあるようだ。

掲示板に埼玉県の方から質問が寄せられたことがある。

一番、有名なところでは、「言問橋」、

誰だったかの小説で、地方出身の彼氏のことを、

母親が「物知らずな人だ。ゲンモンバシなんて読むんだよ」と娘を責めるシーンがあったが

私自身、その本を読んだときも、東京に初めて行って地図を見たときも「?」だったが、

帰ってきてから「小説のあれは、なるほどコトトイバシねぇ」と感心した。

 

東京からは昔、富士山が見えたそうだから(今でも条件が揃えば見えるだろうが)

隅田川のほとりに来て、

やってきた方角を振り返って、富士の頭でも見たのだろう。

あの大きな富士山でさえ、もう遠くにかすむ。

あの人はどうしているんだろうか。

何故こんなことになってしまったのか。

 

気分はこんな感じ。 あの人を置いてきたのは自分のせいなのだけれど。

 2002年7月6日作成、2006/09/18更新 伊勢物語