おきのゐ、みやこしま

  昔、陸奥国で、男、女が住んでいた。男は「都へ帰るつもりだ」と言う。

この女は、とても悲しくて、餞別の宴会だけでもしようと思って、

おきのゐで、みやこ島というところで、酒を飲ませて、詠んだ

  おきのゐて身をやくよりも悲しきは みやこしまべのわかれなりけり

 (炭の熾きの火で身を焼くよりも悲しいのは 都島べのわかれであることだ)

 

 男は、とりあえず、現状に飽きると、どこかに新天地に行きたいものらしいが、

女はそう簡単にどこへでもついていくわけにはいかない。

そういうとき何を言っても仕方のないことは、惚れてしまった女がいちばんよく知っている。

別に、この世でこの男の他に男がいないわけじゃないが、

信じていた人に、自分が置いて行かれる、

それは、身も焦がされるような、そんな思いだ。

振られるときの気持ちって、そんなもの。

振るほうもつらかったりするときもあるけれど、『・・・しかたがないじゃないか』と心のどこかで思っている。

振られるほうは、一体なんでこんな目に会うのかわからないから、

ひらすら辛い。

 

振られたときは、精神衛生上から言えば、落ち込んだときの元気なフリは後遺症が怖いから、

「・・・そして私は中島みゆき」とかなんとか言いながら、

ずずんと落ち込んで、「ひとり上手」など暗い歌を歌うのが、お勧め。

伊勢物語の恋

伊勢物語  2002年6月4日作成 2008/03/25 更新 内田美由紀